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高地トレーニング

高地トレーニングの原理について

高地トレーニング

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高地トレーニングの背景

エチオピアの首都アジスアベバ(標高2,500m)の高地でトレーニングに励んでいたアベベ・ビキラ選手は、1960年のローマオリンピック(マラソン)において裸足で走破し、2時間15分16秒2の世界最高記録で優勝しました。また、1964年の東京オリンピックでは、自己記録を3分以上も短縮する2時間12分11秒2でオリンピックの連続優勝を飾りました。

このことは、高地トレーニングが平地での記録向上に貢献する可能性を示しました。さらに、1968年の標高2,300mで開催されたメキシコシティオリンピックで高地民族がすべての長距離種目を制したことから高地トレーニングが注目されました。

わが国の高地トレーニング研究は、1961~1967年にわたり、世界でも初めての基礎的研究が行なわれ、高地トレーニングによる平地での競技成績の向上やインターバル高地トレーニングの有効性が確認されました。さらに、高地への滞在後3~4週間で順化が達成されることを明らかにしました。

これらの成果をもとに、マラソンの君原健二選手は、メキシコシティオリンピックの対策として、大会の約1ヵ月前に現地に到着して高地順化をはかり、2時間23分31秒0で銀メダルを獲得しました。近年では、高橋尚子選手が、アメリカ合衆国・コロラド州(標高3,200m)でのハードな高地トレーニングも取り入れて、2000年のシドニーオリンピックで金メダルを獲得しました。

高地トレーニングの原理

「高地」とは、標高が高く気圧の低い低圧環境を意味しています。低圧は大気圧の低下に伴う酸素分圧の減少を生じて、低圧低酸素環境をもたらすことになります。たとえば有森裕子選手らがトレーニングを行っていたコロラド州・ボルダー(2,300m)は、約0.8気圧であり、平地で約16%の低濃度酸素を吸入している状態に相当します。したがって、高地で平地と同じ強度の持久性トレーニングを行なうと、平地に比べて相対的運動強度が高まり、からだへの低酸素刺激を増強させます。

図1に示すように、高地トレーニングでは、低圧低酸素環境下で一定期間滞在することによる安静時の呼吸循環系の亢進「受動的効果」に加え、「トレーニング効果」を加えた「合成的効果」を期待しています。

このように、「高地滞在-高地トレーニング」を一定期間継続すると、からだの酸素運搬機能は急性適応(呼吸数増加・呼吸深さ増加・心拍数増加・心拍出量増加・赤血球動員など)から慢性適応(活動肺胞増加・活動毛細血管増加・心臓肥大・赤血球造血亢進・呼吸数減少・心拍数減少・呼吸筋発達など)へ移行します。これが高地順化であり、この効果が平地および高地での競技パフォーマンス向上に貢献しています。

近年、高地トレーニングに関する高地順化という視点からはなれ、平地での競技パフォーマンス向上を目的として、「高地滞在-高地トレーニング」だけではなく、「高地滞在-低地トレーニング」なども取り入れられています。

参考
1)浅野勝巳,小林寛道(編) 高所トレーニングの科学:杏林書院, 2004